WiringBoard-ShowingOff-s

Arduino LLCのMassimo Banziが、ボードの製造と販売を担っていたArduino SRL(旧Smart Projects)に対して、トレードマークの使用やライセンス料の不払いなどを巡って訴訟を起こしたと報じられたのは1年と少し前のこと。その一方で、最近になってWiringを開発したHernando BarragánがThe Untold History of Arduino (翻訳:Arduinoの語られざる歴史)という文書を発表しました。

その文書によれば、ArduinoはProcessingを元に自分が開発したWiringのフォーク(またはコピー)を改称したものに過ぎないとして、主にMassimo Banziの剽窃のような行為を糾弾する内容になっています。

Here are the questions I’d ask “The Founders:”

  • Why did the “Wiring Development Project” need to be replaced?
  • Did you ask the developer if he would work with you?
  • Did you not like the original name? (Banzi gave the project its name, after all)

翻訳: 私はその「創設者達」に質問があります。

  • なぜ「Wiringの開発プロジェクト」は取って代わられる必要があったのでしょうか。
  • なぜその開発者にあなた方と一緒にやらないか聞かなかったのでしょうか。
  • 元の名前が好きではなかったですか。(最終的にBanziがプロジェクトに名前を付けた。)

それに対するMassimoの言い分を短く要約するなら、次の動画の中(3:52~)で述べているようなことになるのでしょう。

… Innovation without asking for permission. So, in a way, Open Source allows you to be innovative without asking for permission.

翻訳:… 許可を求めないイノベーション。ある意味で、オープンソースは、あなたが許可を求めずに革新的であることを可能にします。

だからといって、元の著作者をないがしろにした上、さらに虚偽の話で貶めたりするようなことが許されるわけではありません。Massimo BanziはどちらかといえばWiringのイノベーションというよりも、Arduinoのプロモーションを積極的に展開する形でビジネスを行って来たといえるでしょう。だからこそ彼らはArduinoを商標として登録しておく必要があったし、結局はそれが元になって、互いに仲間を相手に裁判沙汰を起こすことに繋がるのです。もはや、オープンソースを足がかりに利用するマフィアの抗争のようにさえ思えてしまいます。

Arduino316当初こそArduinoのハードウェアはWiringと比べてCPUチップが小規模なもので、シリアルUSBのチップも省かれたものになっていましたが、代わりに変換ケーブルが必要になることから、結局すぐにシリアルUSBのチップを搭載したモデルに代わりました。

ArduinoMega後に登場するArduino Megaの構成はWiringのボードと全く同じと言って良いくらい。CPUも同じATmega1280(現行のモデルではATmega2560)が搭載されています。ここに至って、Wiringを改称する必要があったのかというHernandoの問いに頷かされます。

wiring-sこちらが現行のWiring Sというハードウェア。US$30程度で販売されているようですが、決してマーケティングに成功しているとはいえません。いっそ、ArduinoのI/Oピン配列とコンパチブルにしてしまうくらいの図々しさがあっても良かったのではないかと思います。(Arduino用のシールドを載せられるインターフェース基板が用意されています。)

Arduino IDE α版0013~0017のクレジット画面末尾(左)にHernando Barragánの名が見えますが、0018(右)以降では消えています。これらが古いWiringのクレジット画面と同じサイズなのは偶然でしょうか? (画像のクリックで原寸表示)
about-0016about-0017

Wiring 1.0(現行版)のクレジット画面の謝辞にはMassimo Banziの名が見えます。(画像のクリックで原寸表示)
about-1.0-0100

そして、下の図左がProcessingのIDEとの共通性を指向したWiringのIDE、右がArduino LLCのIDE。スケッチはLEDを点滅させる内容で、どちらも同じ関数を使っていて実質的に全く同じです。これらの画面は現行版のものですが、Arduinoが登場した当時は互いのIDEはより酷似していました。(画像のクリックで拡大表示)
ide_compare

参考: Arduinoの内部分裂について – 株式会社スイッチサイエンス 金本 茂氏
http://mag.switch-science.com/2015/04/07/arduino-v-arduino/

蛇足 : ここへ来てArduino SRLがIDEのバージョン・アップを発表しました。全く紛らわしい限りですね~っ!

http://www.arduino.org/blog/1-the-new-blog/new-arduino-ide-1-7-9